INTERVIEW

2026.6.23

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  • 2026/6/23

    私が愛する、きもの

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    誰にでもある、「好きなもの」。それは私たちの喜び、楽しみ、癒やし、原動力となり、時には人と人とを繋いでくれることも。そんな、人それぞれが持っている「好きなもの」について、お話をお聞きします。 今回ご登場いただくのは、小説家の山内マリコさん。20代後半の頃にきものに魅せられ、一度は遠ざかったものの再びその世界に飛び込むに至ったプロセスを、著書『きもの再入門』に綴られた山内さん。着付けの師範の資格を取得するほどきものに親しみ、その魅力は知れば知るほど奥が深いと語ります。伝統や格式を大切にしながらも、自分らしくカジュアルに楽しむ姿が印象的。便利ではないけれど、心を躍らせてくれるきものへの愛をたっぷりとうかがいました。きものが好きになったきっかけや、お気に入りの私物、PAY IDで気になったきものも紹介していただきます。

    山内マリコ

    小説家。1980年富山県生まれ。女性たちの生き方や価値観を描く作品で支持を集める。『ここは退屈迎えに来て』(幻冬舎文庫)、『あのこは貴族』(集英社文庫)など著書多数。きものとの再会やその魅力を綴ったエッセイ『きもの再入門』(KADOKAWA)や、きもの好きの人々との対談『きもの、どう着てる? 私の「スタイル」探訪記』(プレジデント社)など、きものに関する著書も多数。最新作『陽子さんはお元気ですか?』(オレンジページ)が2026年6月26日に発売。

    Instagram:@yamauchi_mariko

    きものが好きになったきっかけは?

    20代の終わり頃、兄の結婚式に出る際に貸衣装屋さんで振袖を選びました。その直後にふらっと入った〈ふりふ〉という若者向けのきもの店で衝動的にケイタマルヤマのきものを買ったことで、本格的に沼にハマっていきました。柄も色もかわいくて、きもののコーディネートを見ているだけで幸せ。その頃は毎日きもののことを考えて生きてました。着付け教室に通って師範の免状も取りました。しかし、30代を過ぎると魔法が解けたように若者向けのきものが似合わなくなってしまって……。だんだん仕事も忙しくなり、結婚もして、忙しさにかまけているうちに、いつしか熱は冷めていたんです。そんなとき、きもの好きの編集者さんが、きもの本を出そうと声をかけてくれて、『きもの再入門』の連載をしているうちに、あの頃の情熱が戻ってきて現役復帰しました。

    お気に入りのきものを教えてください。

    会津木綿のきもの

    きものを産地で買ってみたくて、織元さんに行くのを目的に旅行しました。併設ショップの鏡で顔映りをチェックしてよさそうなものを見繕ったのですが、色はどうしても絞りきれず、3反を色違いで購入。産地応援の気持ちと、お値段も1反1万円と手頃なのもあって。カジュアルなきものなので、落語を聞きに行くときに着たり、イベントでも着たりしてます。木綿は着付けがしやすいし、着心地もいいし、自宅で洗える。シンプルな縞柄なので帯合わせも無限です。洋服でいうデニムくらい万能だなぁと感じています。

    アンティークの帯揚げ

    一時期きもの離れをしていたのですが、たまたま入ったお店で、アンティークの布を帯揚げとして売っているのを発見。再びハートに火がつきました。決め手になったポイントは、一枚一枚が安い(2~3000円ほど)ことと、帯揚げなので収納の場所をとらないこと。私はもらい物のきものが多く、時代感がバラバラで帯合わせが難しかったのですが、アンティークの帯揚げを挟むと中和されてコーディネートしやすくなるんです。アンティークきものは大好きですが、年齢的に全身アンティークには抵抗があり……。けれど、帯揚げにアクセント的な感じで入れるのはちょうどよくて気に入っています。

    普段の生活やお仕事のなかで、きものを着るシーンはありますか?

    それが正直なくて! 無理やり機会をつくっています。このインタビューにも「きもので行きましょうか?」とこちらから提案しました(笑)。お正月には着るようにしていて、初詣もきもので行きます。浴衣も、着るためにわざわざ用事を作ったり。私にとってきものを着る機会は日常ではなく、特別なものです。だからこそ着てるだけで非日常なので楽しいのかも。

    きものと洋服との違いは?

    きものは……はっきり言って全方位に不便です(笑)。着付けも大変、着て外出するのも大変、メンテナンスも大変。きものを着て出かける日は、意識が全部きものにジャックされる感じです。利便性で言ったら、現代の生活のなかでは洋服に勝る部分は1つもないかもしれません。ただかわいい!楽しい!それだけです。でも、着てるだけでフワフワして、ちょっと別人になれる感覚があって、アトラクションみたいな感じ。完全に趣味の世界ですね。

    きものを選ぶとき、どんな点を大切にしていますか?

    すでに持っているものとコーディネートできるかどうかは意識しますね。「きもの1枚に帯3本」という言葉があるんですが、きものが同じでも合わせる帯で印象がガラッと変わるんです。ただし、きものはフォーマルとカジュアルの境目がしっかりあって、フォーマルなものにカジュアルなものを合わせるとちぐはぐになってしまうなど、トラップが多い。しかも、本気で欲しくなるものは一目惚れなことが多く、「きゃー!かわいい!」が出てしまったら、もう問答無用で衝動買いしてしまうので、絶対に合わないものを持っていたりします(笑)。

    きものの魅力とは?

    きものが普段着として着られていた時代に対するノスタルジー、でしょうか。「みんながこんな素敵なきものを着て、街を歩いている時代があったのか」なんて想像するだけで楽しいです。きものを好きになると、日本の歴史や昔の人々の暮らしにも思いを巡らせるようになります。歴史の積み重ねのなかで、今の自分がここにいるんだなと感じられることもある。便利で安いファッションが溢れているなかで、物を大切にする精神を感じられるところも魅力だと思います。自分がこの文化を大事にしなければという使命感も湧いてきます。

    きものを着てみたい方にアドバイスをするとしたら?

    きものって、とても値段が高いイメージがありますよね。高級なものもありますが、カジュアルなきものやリユースきものなど価格の安いものもたくさんあるんです。そこが沼ってしまう危険ポイントでもあるのですが……。着付けも最近はYoutubeに動画があるので、好きな先生を見つけてください。どこに着ていったらいいかわからないという人におすすめなのは、美術館。人とぶつかりにくいし、座る場所もあるし、静か。きもの割引をしているところもあり、歓迎してくれます。きものにハマると人生が途端に楽しくなったという女性も多いので、生きる活力になる趣味だと思います!

    PAY IDの掲載アイテムで、気になったものを教えてください。

    鷹の柄のアンティーク長羽織

    猛禽類好きな私にはたまらない柄です。赤い帯を合わせているコーディネートも素敵。これを羽織って歩いている女性は、かっこいいだろうな、強そうだなと憧れます。

    鷹柄 羽織 アンティーク 着物 正絹 麻の葉
    アンティーク着物と和装小物 着物屋 一反
    ¥36,000

    藤の花の帯

    この美しい刺繍!昔の刺繍って、今のミシン刺繍とは全然違うんです。絹糸の質感や光り方が独特で、ぽってりと立体感があって、つやっと浮かび上がるような感じ。一見すると分からないけれど、よく見ると刺繍が施されている。そんなさりげない意匠が見つかるのも、アンティークの帯やきものの魅力です。

    藤の花 刺繍 腹合わせ帯 アンティーク 着物
    アンティーク着物と和装小物 着物屋 一反
    ¥58,000

    梅の花の訪問着

    絞りの生地に梅の花。色合わせもかわいい。こういうきものは自分で着るというより、コレクションしたくなりますね。やっぱりアンティークきものって最高に素敵……!

    梅花 絞り 刺繍 訪問着 アンティーク 着物 正絹
    アンティーク着物と和装小物 着物屋 一反
    ¥78,000

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